30代ってもっと大人だと思ってた

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松山ケンイチ、武田鉄矢「こもりびと」のあらすじと感想。親子の力関係

松山ケンイチさんがひきこもりを演じた「こもりびと」。たまたま番組表で見つけてすごく惹かれました。そして見てみたら、泣けました。

僕は松山ケンイチさんが大好きで、出演している映画はハズレ無しだと思っています。武田鉄矢さんが元教師役というのも金八先生を思い出し、おもしろい配役だなと思います。

記事を書いているのは…

元劇団四季、テーマパークダンサー。アメリカの大学に留学経験あり。

※3分ほどで読み終わる記事です。

「こもりびと」のあらすじ

教師を引退した倉田一夫は、定年後ゆったりと生活していた。そんな一夫が胃がんのステージ4と診断される。「同居する家族はいるか?」と聞かれ口ごもる一夫。

一夫の口ごもった原因。それは10年以上ひきこもって生活している40歳の息子の雅夫だ。過去に何度も雅夫を立ち直らせようと努力したが、どうしようもできなかった。一夫は自分が死ぬ前に雅夫を立ち直らせる決心をする。

理解を示した孫娘の美咲が助けになりたい、と足を運んでくる。一夫は美咲の助けを借り、雅夫を立ち直らせようと動き出す…。

役名:俳優

倉田雅夫(40歳):松山ケンイチ
倉田一夫:武田鉄矢
倉田美咲:北香那

ネタバレもしているので気をつけてください。

ひきこもりに向き合う

ひきこもりに真正面から向き合う作品です。8050問題をテーマにしています。

8050問題

高齢である80代の親が、中高年の50代のひきこもりの子どもを支える状況のこと。

40歳を超えたひきこもりに対し行政サービスがない、という情報も入っていたり、ひきこもりの人を理解するための当事者とのミーティングなども紹介されていました。

ミーティングのシーンでは、たぶん当事者の人たちが本人役としてそのままドラマに登場しています励ますような言葉ではなく、ただ「おはよう」「ただいま」という普通の会話をしてほしい、という言葉がすごく印象的でした。

カチナシオ

一夫は、ひきこもりを自己責任と言い放ちます。勝手に仕事を見つけてきたり、息子のことをひた隠しにしたり。とくに雅夫が若いころは厳しい言葉をかけつづけていました。

雅夫のtwitter名は「カチナシオ」。実は一夫が雅夫にかけた言葉が由来になっています。

一夫は美咲とともにひきこもりを勉強する中で、自分の過ちを認めていきます。

引きこもりの実情とは?

ドラマの中では解決策が提示されます。和解のポイントは対話です。プレッシャーをかけることなく対話をしていく。

雅夫はとても優しい人柄で、その性格が原因で心を壊してしまいます。10年以上ひきこもっているものの、優しさに変化はありませんでした。一夫に怒っている場面でも口調は、丁寧な部分がかなり残っています。そうした性格から和解への道がひらけます。

ひきこもりの人たちが暴力的、というイメージは実情と少し違うようです。ひきこもりの人たちは社会を冷静に見ている存在ということもわかりました。

ひきこもりの家庭内暴力に関する調査(2017年度:544人回答)

家庭内暴力がある:3.3%(18人)
過去に家庭内暴力を受けたことがある:22.6%(123人)

境泉洋宮崎大学教育学部准教授(KHJ家族会の副代表)の調査

考察:本音のぶつかり合いはバランスが大事?

物語のクライマックスです。

雅夫が自殺のために歩道橋の上にいます。そして一夫が雅夫のもとに駆けつけます。かつて一夫は雅夫に対し、厳しい言葉、愛情という言葉では片付けられないような厳しい言葉を投げかけていました。そんな一夫に対し、雅夫は本音をぶつけます。その言葉に対し、一夫が「生きているだけでいい!」と一言。そして一夫は血を吐きこの世から去っていきます。

家族間ではお互いにひどいことを言い合うことがあります。そんな関係の中で親はよく「家族だから言うんだよ」という言葉を使うことがあります。実際にそれは本当のことだと思いますし、貴重な意見のときもあります。ただしこの本音をぶつける状況を成立させるためには条件がひとつあると思っています。

それはお互いの力関係のバランスが取れていること。

親子間の会話だと、意見を一方的に押しつけ、もう片方が黙って聞くしかない状況をときどき見かけます。一夫と雅夫はずっとその状況でした。雅夫は一夫に強くあたることはあっても、本音で話すことはありませんでした。歩道橋でついに雅夫が本音でぶつかり、一夫もそれに応えます。

対話とは?

正直言うと、クライマックスのシーンを最初見たときは唐突な感じがして「こんなかんたんに解決しちゃうの?」と感じました。ですが、あとで冷静に考えてこの結論に至りました。

キツイ言い方が問題ではなく、本音でお互いにぶつかり合えていないことが問題なのかな、と。バランスが取れていれば少しくらいヒドイ言い方になってもそこまで問題はないんじゃないかな、と思えました。

一夫はあまりにも一方的に意見を言い、雅夫の意見を無視していました。それが最後に解決したのかな、と思います。

「こもりびと」を最初見たとき、ひきこもりの人たちには優しく丁寧に接するするべきだ、と思っていました。しかし、よくよく考えてみてそういうことではないのかもしれない、と思い至りました。「本音を語れる状況をつくる」。もしかしたらかなり的外れの可能性もありますが、これが解決策なのかな、と思いました。

自分たちが異常なのかも

このドラマのおもしろい部分は自分たちがいつひきこもりになるかわからない。ひきこもりはすぐそばにある、と思わせる部分です。

大きなポイントは孫娘、美咲の存在です。美咲は就職活動中。「協調性を持てとずっと教育を受けてきたのに、就職になると急に個性を出せと言われる」と悩みを語ります。

無事就職が決まったあとの雅夫との会話。本当は音楽が大好きだったのに受験のためにピアノを辞めさせられてしまったと話します。そして自分の価値基準が偏差値だけになってしまったと感じています。雅夫がひきこもりと聞いた時、パワハラやセクハラだらけの社会で生きている自分たちのほうが異常なのかもしれない、と語ります。

このドラマの一番のポイントだな、と思いました。とはいえ美咲は同調圧力のある社会に進みます。美咲は雅夫との対話のなかで自分を守る方法を見つけていれば、と願います。

ちょっとした疑問

最後に気になった点です。ドラマの中で当事者が登場するシーン。当事者の生の声はリアルで、喋り方もすごくスムーズです。ですが、空気感が少し違うので、このシーンだけ浮き立っている感じがして、俳優の人をキャスティングしても良かったんじゃないかな、と思いました。

長くなってしまいましたが、どうもありがとうございました。